実家の相続手続き、何から始めればいい?
親が亡くなったあと、葬儀が一段落した頃にやってくるのが相続の手続きです。役所や金融機関、法務局と、関わる窓口がばらばらで、しかも期限のあるものが混じっている。何から手をつければいいのか分からなくなる、というご相談はよくいただきます。
ここでは、細かい手続きの解説というより「全体の見取り図」として、最初に押さえておきたいことを整理してみます。なお相続は個別の事情で扱いが大きく変わる分野なので、実際に進めるときは司法書士や税理士といった専門家に確認しながら進めてください。
最初にやるのは「調べる」こと
いきなり名義変更や分け方の話に入りたくなりますが、その前に必要なのが現状の把握です。順番としては、だいたいこの3つが起点になります。
- 遺言書があるかどうかの確認:あるかないかで、その後の進め方が根本的に変わります。自筆の遺言書が見つかった場合、封を開けずに家庭裁判所の検認を受ける必要があるものもあります
- 相続人が誰なのかの確定:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどって確認します。ここは思っていたより時間がかかる部分です
- 財産の洗い出し:不動産、預貯金、保険、株式などのプラスの財産と、借入金などのマイナスの財産の両方
特に財産の洗い出しは、実家の中を探すところから始まることが多いです。通帳、権利証、保険証券、固定資産税の納税通知書といった書類がどこにあるか分からない、というのはよくある話です。
期限があるものから逆算する
相続の手続きで厄介なのは、期限が決まっているものがいくつかあることです。代表的なものを挙げると、こんな流れになります。
- 3か月以内:相続放棄・限定承認の申述。借金の方が多そうな場合など、相続しないという選択をするならこの期間内に家庭裁判所へ。起算点は「自分が相続人になったと知った時」からです
- 4か月以内:準確定申告。亡くなった方に確定申告が必要だった場合に行います
- 10か月以内:相続税の申告・納付。ただし相続税は基礎控除があり、財産の総額がそれを下回れば申告自体が不要なケースも多いです
- 3年以内:不動産の相続登記。2024年4月から義務化され、正当な理由なく期限を過ぎると過料の対象になり得ます
この中で最初に来る3か月というのが、実際にはかなり短く感じられます。葬儀や役所の届け出をこなしているうちに、あっという間に過ぎてしまう。もし借入や保証の可能性が少しでも頭をよぎるなら、早めに専門家へ相談しておいた方が安心だと思います。
相続登記の義務化について
以前は、実家の名義を親のままにして何年も放置する、ということが珍しくありませんでした。ただ2024年4月の法改正で相続登記が義務化され、取得を知った日から3年以内の登記が求められるようになっています。過去に発生した相続についても対象になるため、「何十年も前に相続したまま手つかず」という土地や家がある場合は、一度確認しておいた方がいいでしょう。
手続き自体は法務局で行いますが、必要書類が多く、相続人が複数いる場合は遺産分割協議書も要ります。ご自身で進めることも不可能ではありませんが、司法書士に依頼する方が結果的に早いことも多いです。
手続きと並行して出てくる「実務」の部分
ここまで書いてきたのは書類の話ですが、実際にはそれと並行して、物理的にやらなければいけないことも出てきます。
- 実家に残った家財や遺品の整理
- 誰も住まなくなった家の風通し・見回り
- 庭木や雑草の手入れ(放置すると近隣への影響が出やすい部分です)
- 売却や賃貸を検討する場合の、家の中の片付け
相続の話し合いが長引くと、その間ずっと家が空いたままになります。半年、一年と経つうちに庭が荒れたり、湿気で傷んだりしていくので、手続きが終わるのを待たずに最低限の管理はしておくのが理想です。
専門家との線引き
登記や税金、相続人同士の争いに関わる部分は、司法書士・税理士・弁護士といった専門家の領域です。私たち便利屋がそこに立ち入ることはできません。
一方で、実家の片付けや草刈り、遠方にお住まいの方に代わっての現地確認といった実務的な部分は、お手伝いできる範囲です。「専門家に相談する前に、まず家の中を見られる状態にしたい」といった下準備の段階で使っていただくことが多いです。
ひとつずつで大丈夫
相続の手続きは、全体を一度に理解しようとすると重たく感じます。ただ実際には、期限の近いものから順に片づけていけば進んでいくものです。分からない部分は無理に自分で抱えず、専門家や周りの手を借りながら進めていってください。